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失う
家族の一員として長年暮らしていたあの子。
お気に入りのベットにもソファーにも居ない寂しさ。
家中探しても見当たらない。
名前を呼んでみても姿が見えない。
嬉しい時も悲しい時もずっと側にいてくれたけど、あの温もりは感じられない。
急にひとりぼっちになってしまった。
部屋が広く感じる。
寂しさが冷たい風のようになって体を包んでいる。
一緒にいた時には実感がわかなかった。
居なくなってから初めて大切な大切な体の一部を失くしてしまった喪失感。
大きな存在だったんだと改めて感じる。
当たり前のようにいつも一緒だった。
居なくなるなんて考えてもみなかった。
私だけがここに残されてしまった。
何故なんだろう?
どこでこうなったんだろう?
もっと早くに病院に連れて行かなかったんだろう?
出来る事はたくさんあったはずなのに…。
後悔と怒りと悲しみと。
もうグチャグチャして自分の事が分からなくなってしまった。
早くにあのこのところへ行きたい。
自分だけ生きてはいけないような気がする。
そうだ。
私はもう行かなくちゃいけない。
待っているんだ。
「まだ来ないで。来るのは早いよ。」
どこかで声が聞こえた。
そんな気がしたんだ。
青空の下、不自然なくらい温かい冬の午後。